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【会社法】設立中の会社まとめ(百選5~8)

設立中の会社

 

【論点】設立中の会社の法律関係

発起人が会社設立のために取得し負担した権利義務は実質的には設立中の会社に帰属しており、会社が成立すればそれらは会社に帰属する(同一性説)

 

発起人の行為の分類

 

【論点】発起人の行為4類型

※発起人の権限の範囲につき自己の立場をはっきりさせることが重要(『論文演習会社法(上)』p41)。

自説は、発起人を設立中の会社の執行機関と解し、発起人の権限には下記の①+②が含まれると解する。

 

設立を直接の目的とする行為

 

・定款作成(26)、株式の引受け・払込みに関する行為(36)、募集設立における創立総会の招集(651)

発起人の権限に含まれることは明らかであり、成立後の会社に効果帰属する。

設立のために必要な行為

(※「設立のために法律上・経済上必要な行為」と説明される場合もある)

 

ア 定款認証手数料・印紙税、払込取扱機関に支払う手数料・報酬、検査役の報酬、設立登記の登録免許税

284号かっこ書、規則5条などから発起人の権限に含まれることは明らかであり、その効果は成立後の会社に帰属する。

 

イ その他の設立費用

=上記以外の設立のために必要な行為。設立事務を行うための事務所の賃借、設立事務のための事務員の雇用など。

定款記載(284)、検査役調査(33)が必要となる。

設立費用の総額が定款の記載額を超える場合の法律関係が問題となる。

(⇒定款に記載された額の限度で会社に帰属する。)

財産引受け又は開業準備行為

ア 財産引受け

=会社の成立後に特定の財産を譲り受ける契約。

定款記載(282)、検査役調査(33)が必要となる。

定款に記載のない財産引受けは無効になる。そこで、これを成立後の会社が追認できるかが問題となる。(⇒追認できず、会社に効果帰属しない)

 

イ 開業準備行為

=会社が事業を始める準備として行う行為。会社が成立後にすぐに事業を行えるように、土地・建物等を取得したり、原材料の仕入れや製品の販売ルートを確立しておくなどの行為。

開業準備行為につき、財産引受けに関する28条、33条を類推適用できるかが問題となる(⇒類推適用はできず、発起人の権限外の行為となり、会社に効果帰属しない)

事業行為

→発起人の権限に含まれず成立後の会社に帰属しないことは明らかであるが、取引の相手方が誰に履行や賠償請求できるかが問題となる。

 

 

リークエによる分類=開業準備行為と事業行為は区別できない、という考え方に立つ。

設立を直接の目的とする行為

設立のために必要な行為

財産引受け

財産引受け以外の行為

 

 

設立費用

 

【論点】設立費用(百選7)

定款に記載された額の限度内において発起人のした取引の効果は成立後の会社に帰属し、相手方は会社に対してのみ支払いを請求できる。

 

【論点】では、定款に70万円と記載しているにもかかわらず、発起人がA40万円、B60万円の契約を締結した場合、法律関係はどうなるか。

※下記は自分で命名。若干不正確のおそれあり、百選7の解説等参照。

※リーガルクエストの記載からは下記の①か②が有力とされている。自説は判例に整合的な①を採る。

時系列説によれば、Aが先の場合、会社に対してA40万、B30万請求でき、発起人に対しB30万請求できる。

 

時系列説

全額発起人負担説

全額会社負担説

連帯債務説

行為の時系列によって効果が帰属するかどうかを決する。いずれの取引が先になされたか不明の場合には債務額に応じて按分する。

判例とは異なり、取引債務を負うのは発起人のみであり、発起人は会社に対して定款記載の額を限度として求償しうる。

判例とは異なり、取引債務を負うのは会社のみであり、会社は発起人に対して定款記載の限度として求償しうる。

判例とは異なり、会社は取引債務を引き継ぐが、相手方は会社と発起人いずれに対しても請求しうる。

問題点:

設立費用が定款記載の額を超える場合は、処理が複雑になる。

問題点:

会社が拒んだ場合、設立費用を下回る場合でも会社に対して請求できない。

問題点:

会社の財産形成を軽視している。

問題点:

会社の財産形成を軽視している。

 

財産引受け

 

【論点】定款に記載のない財産引受けは無効となる(28条柱書)。では、会社成立後会社はこれを追認できるか。

 

追認否定説(判例・リークエ)

追認肯定説

実務では、時間のかかる検査役調査は避けられる傾向にあるので、追認肯定説を採ると、財産引受けについて誰も定款記載・検査役調査を行わなくなり、制度が空洞化する。

・会社に有利な取引であれば追認を認めるほうが会社の利益になるし、会社の財産的基礎も害されない。

ただし、事後設立にあたる場合には特別決議、そうでない場合で重要財産処分に当たる場合は取締役会決議を要求すべき。

 

【論点】財産引受けにあたる取引後、長期間が経過した後に会社が無効を主張することは許されるか(百選6)

財産引受けの相手方は、特段の事情のない限り、右の無効をいつでも主張することができる。

もっとも、長期間無効主張しなかった場合など信義則に反する場合は無効主張が許されない。

無効事由について契約後約9年を経て初めて主張するにいたった場合は、法が本来予定した株主、債権者などの利害関係人の利益保護という目的でなく、すでに遅滞におちいった本件契約に基づく自己の残債務の履行を拒むためのものであると認められるから、信義則に反し許されない。

 

開業準備行為

 

【論点】いわゆる開業準備行為に財産引受けの規定(28条、33)を類推適用すべきか。

 

類推否定説(判例・リークエ)

類推肯定説

そもそも定款にどのような記載をすべきかが明らかでない。

・すぐに事業を始めたい者は、むしろ時間のかかる検査役調査を避けるべく、金銭出資のみで会社を設立し、会社設立後に開業準備行為を行う。

・財産引受けは開業準備行為の一種である。

・会社成立時に直ちに事業活動を開始できるようにすることが実務の便宜にかなう。

 

 ※類推否定説の場合に成立後の会社に効果帰属させるには、会社との合意に基づき発起人の契約上の地位を成立後の会社が個別に譲り受けるという方法がありうる(江頭75p)。

 

 

【論点】開業準備行為の効果が成立後の会社に帰属しない場合、発起人は相手方に対していかなる責任を負うか(百選5)

民法1171項の類推適用。

117条は本来は実在する他人の代理人として契約をした場合の規定であるが、同条はもっぱら代理人であると信じてこれと契約した相手方を保護する趣旨にあるため。

 

発起人が権限外の行為(開業準備行為・事業行為)を行った場合の処理

当該行為が発起人の権限の範囲内であれば成立後の会社に帰属する。

当該行為が発起人の権限の範囲外であるが、発起人組合の目的の範囲に含まれていると解される場合には、発起人組合に効果が帰属し全員が責任を負う。(ex.組合員7人中4人により組合を代理して締結した売買契約の効果)

発起人組合の目的の範囲外の行為であっても、発起人が独断で締結した契約については、発起人は117条類推適用によって責任を負う場合がある。

 

発起人組合とは

複数の発起人が存在する場合、発起人は会社設立を目的とする組合契約を結んでいると意思解釈され、設立に関する行為を当該組合契約の履行として行っていると理解される。

 

●設立無効事由

【論点】本件設立に設立無効原因はあるか。明文がなく問題となる
この点、設立が無効とされると会社の利害関係人に重大な不利益が生じることから、設立手続に重大な瑕疵がある場合にのみ無効原因が認められる
(例)
・定款の絶対的記載事項を欠く場合(27条違反)
・定款の認証を欠く場合(30条違反)
・発起人が1株も引き受けない場合(25条2項違反)
・出資される財産の最低額に達しない場合(27条4号違反)

 

●事後設立

 

【論点】事後設立の意義

・株式会社の成立後2年以内にその成立前から存在する財産であり、その事業のために継続して使用するものを、当該会社の純資産額の5分の1を超える対価で取得すること(467条1項5号、規則135条)

・現物出資や財産引受けの規制の潜脱を防ぐために、株主総会特別決議が要求される。

 

●払込みの仮装

 

【論点】仮装払込みは株式の払込みとしての効力を有するか。また、仮装払込みにあたるか否かの判断要素をいかに解すべきか(百選8)。

株式の払込は、設立にあたって資本の充実を図ることを目的とするから、現実に資金が獲得されなければならない。当初から真実の株式の払込として会社資金を確保する意図がなく、一時的に借入金を持って単に払込の外形を整え、株式会社成立の手続語直ちに払込金を払い戻してこれを借入先に返済する場合は、実質的には払込があったとはいえず、仮装払込みは無効である。

会社成立後借入金を返済するまでの期間の長短、払戻金が会社資金として運用された事実の有無、借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響の有無など

判例の事案は、払込取扱機関からの借り入れではあったが現実の資金移動があったことから、見せ金と預合いの中間形態にあたるもの。

 

【論点】見せ金

定義:発起人が払込取扱金融機関以外から払込金額相当額の金銭を借り入れてその金銭を払込みにあて、会社成立後に、取締役となった元発起人が直ちに払込金相当額を会社から引き出して自身の借入金の返済に充てるもの。

 

★無効説(通説)

有効説

全体としてみれば、計画的な仮装払込みのためのからくりの一環であり、払い込まれた金銭を会社の資金として運用することが予定されていない。

また、現実に出資を履行した引受人がいる場合、引受人間の公平を害する。

借り入れた金銭を払込みにあてたり、会社成立後に発起人に資金を貸し付けることも個別的に見れば有効になしうる。

発起人の主観的意図によって払込みの効力は左右されず、取締役の損害賠償責任が問題になるにすぎない。

 

【論点】預合い

定義:発起人が払込取扱金融機関と通謀し、発起人が払込取扱金融機関から払込金相当額を借り入れ、発起人がその借入金を返済するまでは、会社は払込取扱金融機関から払込金を引き出さない旨の約束をするもの

見せ金と預合いとの相違点は、預合いの場合は現金の移動がなく、払込取扱金融機関の帳簿上の操作のみが行われるにすぎないこと、預合いは刑事罰で禁止されていること(965)である。

 

【条文チェック】仮装払込みに関わった者の責任

・仮装払込みをした発起人・引受人は、会社に対して、払込みを仮装した払込金額の全額を支払う義務を負う。(52条の2①102条の2①213条の2②ⅰ)

・仮装払込みに関与した取締役・発起人・執行役も、注意を怠らなかったことを証明しない限り、払込みを仮装した発起人などが支払うべき額と同額の金銭を、連帯して会社に支払う義務を負う。(52条の2②103条②、213条の3①)

 

【条文チェック】払込みが仮装された株式の成否

・仮装払込人は、支払義務を履行するまでは、株主の権利を行使することができない。(52条の2④、102条③、209条②)

・払込みが仮装された株式の譲渡を受けた第三者は、仮装払込みにつき悪意重過失のない限り、支払義務が履行されていなくても株主の権利を行使することができる。(52条の2⑤、102条④、209条③)

 

 

【論点】仮装払込みは、新株発行無効原因となるか。

 

★有効説

無効説

209条②は仮装払込人が支払義務を履行しなくても失権することとしていない。また209条③は株式の悪意重過失のない譲受人に株主権の行使を認めている。

・現物出資財産の不足や、不公正な払込金額の場合と同種の問題が生じるところ、これらの場合は無効原因とならないと解されてきたこととの均衡を図るべき。

・個々の株式に関わる瑕疵であって新株発行全体に共通する瑕疵ではないから、有効と解すべき。

・仮装払込みされた株式が善意無重過失の第三者に譲渡され有効に株主権が行使される危険を除去すべきであるから、新株発行無効の訴えを認めるべき。