競業取引・利益相反取引

競業取引(35611)

 

【論点】競業取引が出題された場合の処理工程

「自己または第三者のために」の計算説の論証・認定。 

自己と第三者のどちらに経済的利益が帰属するケースかの認定も忘れずにすること。

 

目的物と市場(地域・流通段階)の競合する取引の論証・認定。 

当該行為がそもそも「取引」といえるかという点にも注意すること。ただ他社の取締役に就任したとか、従業員を引き抜いたとかいう行為はそもそも競業取引ではない。

 

4232(「当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額」)の適用。 

当たり前だが、競業取引をやったからこそ得られた分、が損害額になる。前年の利益が200万だったが、今年は競業取引により1000万円になった、という場合、損害額は800万となることに注意。

 

株主総会(取締役会設置会社の場合は取締役会)に重要な事実を開示し、その承認を得たか

 

 

【条文】条文の内容はおぼえてしまおう

3561

取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。

取締役が自己または第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。

 3651

取締役会設置会社における第356条の規定の適用については、同条第1項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。

 

 

【論点】競業取引にいう「自己または第三者のために」の意義(計算説) (20、事例10)

 この点につき、会社の利益を保護するという競業取引規制の趣旨から、取引の名義という形式的基準ではなく、経済的利益の帰属という実質的基準により判断すべきである。

 そこで「自己または第三者のために」とは、自己または第三者の計算において(経済的利益を帰属させる)取引する場合をいうと解する。

 

 

【論点】「事業の部類に属する取引」の意義(事例10)

 この点、35611号の趣旨は、取締役がその地位を利用して会社の取引先を奪うなど、会社に損害を与えることを防止する点にある。

 かかる趣旨から「事業の部類に属する取引」とは、会社が実際にその事業において行っている取引と目的物と市場(=地域・流通段階等)が競合する取引をいう

そして、会社が現に行っていなくても、進出のための準備を進めている事業については競業取引にあたる。

 

【論点】次の行為は競業取引になるか???

完全子会社の代取に就任すること

子会社の利益が親会社に帰属する関係にあるから、利益衝突をきたす可能性はない。

競合他社の取締役に就任すること

就任するだけでは「取引」ではないだろう。

社員を引き抜き他社に転職させること

「取引」ではないから、競業取引ではない。

不当な態様で行った場合は忠実義務違反の問題になる。

 

 

利益相反取引(35612号、3)

 

【論点】「自己または第三者のために」(名義説) (事例10)

 (この点現行法では、会社が取締役以外の者との間で、会社と取締役の利益が相反する取引をする場合には間接取引として規制されるから、)「自己または第三者のために」とは、自己または第三者の名において取引する場合をいうと解する。

・「自己のために」:取締役自身が会社の相手方となる場合

・「第三者のために」:取締役が他の自然人・会社を代理・代表する場合

 

 

【論点】間接取引の意義

 会社が取締役の債務を保証すること、担保を提供すること、引き受けること等が間接取引にあたることは争いがない。ではどのような行為まで間接取引に含まれるか。

 この点、会社と第三者との間の取引であって、外形的・客観的に会社の犠牲で取締役に利益が生じる行為をいう(江頭)

 

解説中の定義

間接取引:実質的に会社と取締役との間に利益の衝突があるもの

 

 

【論点】利益相反取引にあたる場合の効力 (事例10)

 

直接取引

間接取引

無効:利益相反取引規制の趣旨から原則無効。

 (※取締役会の承認を受けた利益相反取引においては、民法108条の規定を適用しないとする3562項の反対解釈により、その承認を受けないでした行為は無効となるという説明がある。ただし、利益相反取締役が会社を代表した場合の効力が無効となるというところまでしか導けない。)

相対的無効:会社財産を保護するという趣旨から、取締役会の承認を経ない利益相反の効力は原則として無効とすべき。

 しかし、相手方、または第三取得者が、当該取引が利益相反取引にあたることや、取締役会決議を経ていないことについて知らない場合にまで当該取引を無効とするのは取引の安全を害し妥当ではない。

 そこで、会社は相手方、または第三取得者の悪意を主張立証してはじめて当該取引の無効を主張できる。

 

 

【論点】利益相反取引の相手方は取引の無効を主張することができるか?

できない。(最判昭和481211)

利益相反取引規制は会社の利益を保護するためのものであるから。

 

 

【論点】利益相反取引がなされた場合の任務懈怠責任の処理

 

4233項により、以下の取締役は任務懈怠が推定される

3561項の取締役

当該取引を決定した取締役(=会社を代表した取締役?)

取締役会の承認の決議に賛成した取締役

・これらの取締役は任務懈怠の推定を覆さない限り、任務懈怠責任を負う。

・「自己のために直接取引をした取締役」は、「責めに帰することができない事由」によることをもって責任を免れることができない(4281)

 

 

 

自己のために直接取引をした取締役

任務懈怠の推定された他の取締役

学説1

(立案担当者の見解)

・「任務懈怠がなかったこと」を主張立証することにより免責されうる。

・任務懈怠があった場合、「不可抗力であること」をもってしても責任を免れない。

・・・十分な注意義務を尽くしたかという問題か、不可抗力であったかという問題かの分類の基準が定かではない。

・「任務懈怠がなかったこと」を主張立証することにより免責されうる。

・任務懈怠があった場合でも「不可抗力であること」をもって免責される。

学説2

・「会社に損害を生じさせる直接取引を行うこと」自体が任務懈怠にあたる(結果債務)

したがって、十分な注意義務を尽くしたこと(=過失がないこと)をもってしても免責されない。

・「任務懈怠がなかったこと」を主張立証することにより免責されうる。

・任務懈怠があった場合でも「不可抗力であること」をもって免責される。

 

 

【論点】一人会社において、取締役会の承認決議を欠く利益相反取引がされた場合 (事例10)

 

利益相反取引につき取締役会の承認が必要とされている趣旨は、会社の利益保護にある。

そうだとすれば、一人会社の場合に株主がそれに同意している場合、一人会社でなくとも株主全員が合意している場合には、取締役会の承認がなくても当該取引の効力は有効となると解する。